日本看護診断学会第17回学術大会報告 看護診断とスピリチュアルケア―全人的なアセスメント・介入能力を高めるために
【教育講演】
3.日本文化的スピリチュアルケア―日本人の深層意識に底在するいのち観
大下 大圓
1,2
Daien Oshita
1,2
1飛騨千光寺
2京都大学大学院医学研究科
1Hida-Senko-ji Temple
2Graduate School of Medicine, Kyoto University
pp.54-59
発行日 2012年3月15日
Published Date 2012/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7004100355
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古代インド哲学と仏教にみる医療
日本人のいのち観は,アジアの底流に流れている一元論的価値観,インド古来の思想哲学を反映している.それは,古代インドの哲学的世界観を著した『ウパニシャット(Upanisad)』や『ヴェーダ(Veda)』の教えである.神(宇宙)と人間との関係は,「梵我一如」という一体観である.
インドで生まれた「輪廻」の思想も,アジアの諸国に信奉されている.輪廻とはサンスクリット語で「サンサーラ(Samsara)」といい,生まれ変わり,つまり,ものごとの循環性の法則を説いたものである.万物の変化と人の魂の生まれ変わりを意味する用語として使われる.また,釈尊の教えは,「その影響を受けながらも,その宿命論から距離をおいて,偏らない中道という教えを獲得して,あらゆる束縛から解脱(解き放たれること)する」という安らかな道を提示する.よって仏教は,最終的に輪廻に囚われる苦悩からの解脱を究極の生き方であると説く.古代インドの思想では,個々の出来事はすでに原因のなかにその本性があるということに対して,仏教は衆縁和合によって生ずると説いた.つまり,すべては関係性を表す「縁」によって成り立っていると解釈した.
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