日本看護診断学会第6回学術大会報告 高齢社会でHUBとしてはたらく看護診断
【教育講演】
2.エキスパートナースの看護診断能力:その特徴と発達過程
野島 良子
1
Yoshiko Nojima
1
1滋賀医科大学医学部看護学科
1Shiga University of Medical Science
pp.62-68
発行日 2001年3月15日
Published Date 2001/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7004100079
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
はじめに
エキスパートナースがもつ広範な専門的知識と卓越した技術ほどクライエントに安心と元気を与えるものはない.広範な専門的知識は,ナースが状況の必要に応じて下す判断に納得のいく裏付けを与える.他方,卓越した技術はナースの行動から無駄を省き,その目的に必然性を与える.このようにしてエキスパートナースの行う看護ケアは,その時その場でクライエントが最も必要としているケアに,適切かつ的確に,しかも素早く焦点が合わされていくのである.看護診断を下す能力は,ナースの認識能力と神経筋肉運動能力とが統合されて働く総合的技術である.Thompson1)はエキスパートの本質を,「状況の中から最小の手がかりを得ると直ちに適切な行動を起こすことができる能力」(p.7)と呼んでいる.あらゆる実践分野で用いられる他の技術の習得と同様,エキスパートナースのもつ看護診断能力も,新人ナースの段階から幾つかの中間段階を経て獲得され,次第に熟達の域に到達するように思われる.ここでは,エキスパートナースの看護診断能力の特徴を,1)情報処理理論,2)ネットワーク理論,3)意味解釈理論に沿って整理し,実践経験と熟達した診断能力の獲得との関係について考察してみる.
Copyright © 2001, Japan Society of Nursing Diagnosis. All rights reserved.