第15回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 ●教育講演
クロニックイルネスと病みの軌跡についての論考―生活者を支える実践の基盤として
黒江 ゆり子
1
Yuriko Kuroe
1
1岐阜県立看護大学・大学院
1Gifu College of Nursing
pp.60-63
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
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はじめに
現代社会に生きる私たちは,科学技術の高度な発展による多様な恩恵を受けながら生活し,保健医療領域においては病気の急性状況を乗り越えることが可能になり,数々の危機的な状況への対応方法にも多様性が生まれている.しかしながら,これらの急性状況あるいは危機的状況を脱した後に,ひとり一人が自分のそれまでの生活に戻ろうとすると,身体機能に変化がもたらされるとか,長期にわたる病気の管理が必要になるなど,実にさまざまな対応に迫られている.
病気の状況が長軸的に続くこのような状況はクロニシティ(慢性性)として捉えられ,生きるための十分な支援が必要であるとされている.糖尿病とともにある生活は,クロニシティの特性をもつ状況であり,慢性疾患(chronicdesease)から慢性の病い(chronic illness)と捉えなおすと,疾患の経過に焦点をおくというより,病気とともにある個人および家族の経験に焦点をおくことが可能となる.
本稿では,クロニックイルネスの考え方と病みの軌跡をふまえ,生活者を支援することについて考えてみたいと思う.おそらく,そこから,人と病いの新たなかかわりを見出す探究の可能性が生まれるであろう.
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