焦点 看護学における「生活者」という視点─「生活」の諸相とその看護学的省察
慢性の病いと「生活者」,そして「生活」
健康教育とクロニックイルネスにおける「生活者」と「生活」を考える
河井 伸子
1
,
中岡 亜希子
2
,
黒江 ゆり子
3
1千葉大学大学院看護学研究科博士後期課程
2大阪市立大学医学部看護学科
3岐阜県立看護大学
キーワード:
生活者
,
生活
,
健康教育
,
クロニックイルネス
Keyword:
生活者
,
生活
,
健康教育
,
クロニックイルネス
pp.365-371
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100148
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
健康教育は,衛生知識の普及を目的として1940年代に始まり,疾病構造や社会の変化とともに,知識を普及させ態度を変容させ習慣や行動を変容させるようなモデルから,健康のセルフマネジメント(自己管理)能力の向上を目的とした学習援助型の健康学習やエンパワメントなどのモデルに発展している(日本健康教育学会,2003,pp. 138-142)。現在では,健康を病気や症状や異常などの有無や程度から捉える「疾病モデル」ではなく,生命や生活や人生などを包括したライフ(life)との関わりで心身全体のよい状態やそれをめざすことに着眼した「ライフモデル」で捉えることで,疾病を除去したり軽減するという発想ではなく,正常な発達や加齢を維持・強化・保全し,自立度,自律度,生活能力,生活の質,生きがいなどを強め高めることを目標に取り入れることが重要であると考えられるようになっている(日本健康教育学会,2003,p. 14)。
すなわち,健康教育においては,対象となる人々の疾病の理解だけではなく,生きることや生活を捉えることが求められており,それは自立や生活能力,あるいは生きがいを強め,高めることを意味する。本稿では,「生活者」「健康教育」をキーワードとして検索された文献のなかで,「生活者」という視点から,どのように「生活」が描かれているのかをみていこうと思う。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.