第19回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 ●教育セッション3
病みの軌跡を学ぶ—〜看護実践への適用〜
伊波 早苗
1
Sanae Iha
1
1滋賀医科大学医学部附属病院看護部
1Shiga University of Medical Science Hospital
pp.59-64
発行日 2015年3月15日
Published Date 2015/3/15
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1.病みの軌跡の誕生プロセス
「病みの軌跡」の誕生プロセスは,1965年に発刊された「死のアウェアネス理論と看護」(Glaser, 1965)にさかのぼる.この本では,終末期の情報をめぐる患者と医療者と家族の間の相互作用がどのようなものなのかを示し,多くの看護師がこの本を読み,死と死にゆく患者と家族について思案をしたことだろう.この本を記した時点で,社会学者のストラウスとグレイザーらは,死に臨むプロセスでは病みの行路を方向づけるために多くの方略を用いているという洞察結果を得ていた.その時に,「軌跡」という用語が用いたのが始まりである.
1971年からストラウスらは,看護教育に「軌跡」の考えを取り入れ始め,慢性状況に関する知識を集積し,慢性の病気を描き出す方法を探求した.そして,その結果を「慢性疾患を生きる」(Strauss 1984)という本に著した.この本では,①慢性の病気は1つの行路をもっていること,②その行路は適切な管理によって方向づけができること,③慢性の病気は毎日の生活にさまざまな問題(必要な養生法,時間の調整,生活上の孤立など)を確実にもたらし,その個人と家族が生活の質を維持するためには,それらを調整しなければならないということが書かれている.また,この本の中で初めて「軌跡」という概念を紹介している.
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