特集 「病とともに生きる」を援助する クロニックイルネスの視点から
「クロニックイルネス」とは何か?
黒江 ゆり子
1
1岐阜県立看護大学大学院
pp.1062-1070
発行日 2007年12月1日
Published Date 2007/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101159
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はじめに
人は誰でも病気になる可能性を持っており,病気はどのようなものでも慢性に移行する可能性がある.ことに現代社会においては,20世紀後半における医療技術のめざましい進歩によって,生命維持装置などの医療機器が発達するとともに多種類の医薬品が続々と開発された.これらの医療機器と多様な医薬品を用いた高度医療の発展の時代を迎えた結果,急性疾患に伴う生命の危機的状況の多くは克服されるようになり,医療技術の進歩から私たちは多くの恩恵に与ることとなった.しかし一方では,生命の危機的状況を克服した人々のすべてが元の状態に回復あるいは治癒するわけではなく,慢性的状況に移行するケースが多くなったということも,高度医療の時代のもう1つの側面である.
すなわち,現代に生きる私たちにとって慢性の病い(註1)とともに生活することは,他の誰かの事柄なのではなく,自分自身の事柄なのである.本稿では,病いとともに生きることをどのように捉えることができるかを踏まえ,そこへの援助のあり方を考えてみようと思う.
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