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はじめに
不全脊髄損傷による下肢麻痺は歩行障害を引き起こし,日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の低下につながり,リハビリテーション(以下,リハ)における歩行訓練を通じた歩行再建は重要である.歩行訓練は,平行棒,杖,装具などを用いた起立訓練に始まり,訓練士が体幹や下肢を介助して床上を歩行訓練するのが一般的であった.
近年,体幹を懸垂して,トレッドミル上を歩く部分免荷トレッドミル訓練(body weight-supported treadmill training:BWSTT)が注目され,歩行訓練に活用されている.この訓練方法が広く行われるようになった背景には,実験的に脊髄を切断したネコをトレッドミルに載せ,トレッドミルを動かすと,麻痺の下肢にsteppingが生じることが報告された1).この現象は,ヒトでも確認され,C6機能残存やT9機能残存の脊髄損傷者の体幹を懸垂し,トレッドミルの上でsteppingを行うと歩行様の筋電が誘発される2).脊損ネコをトレッドミルでの歩行訓練を行うと,受傷2週目に比べ,12週目で前脛骨筋とヒラメ筋に筋電が誘発されることが確認された3).そこで,脊髄損傷者歩行訓練にBWSTTが1990年代後半より導入された.特に不全麻痺ではBWSTTにて,より有効に筋収縮の導出が可能となった.
しかし,BWSTTでは,下肢の振り出しを行うため,麻痺が重度の場合には2名の訓練士がそれぞれの足をかがんだ姿勢で補助する必要があり,大きなマンパワーを必要とした.この点を省力化するために,下肢の駆動をロボットで行うロボット補助歩行訓練(robot asisted gait training:RAGT)が2001年に導入された4).現在は,BWSTTをベースとするRAGTが可能なLokomatとGaitTrainerなどが各国で使用されている.このRAGTは,先進的な訓練ではあるが,コストが高く,実際にどの程度有効であるかについて多くの臨床家が関心を寄せている.
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