講座 福祉ロボット工学・1【新連載】
脊髄損傷者の歩行補助ロボットWPAL(wearable power-assist locomotor)
平野 哲
1
,
田辺 茂雄
2
,
加賀谷 斉
1
,
才藤 栄一
1
Satoshi Hirano
1
1藤田保健衛生大学リハビリテーション医学Ⅰ講座
2藤田保健衛生大学医療科学部
pp.61-68
発行日 2011年1月15日
Published Date 2011/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101849
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はじめに
脊髄損傷の発生頻度は,本邦で年間5,000人程度と推計されている.脊髄損傷による対麻痺は,いったん生じると不可逆的であり,車いすが唯一の実用的移動手段となる.発症年齢は若年者と50~60歳代にピークがあり,特に対麻痺の原因となる胸腰髄損傷は若年者に多い.発症後の生命予後は比較的良好であり,20歳で受傷した完全対麻痺者の平均余命は40年以上とされるため,非常に長期にわたって車いすを利用することになる.
長期間の車いす生活は骨粗鬆症,関節拘縮,便秘,肥満など様々な医学的問題の原因となる.また,健常者よりも低い目線で生活を続けることが,対麻痺者の自己像再獲得の阻害因子となることもある.車いす上のADLが自立していても,再び立ちたい,歩きたいと願っている対麻痺者は多い.実用的移動手段としての車いすは必要不可欠だが,望む時に立位・歩行を可能とする歩行補助手段の開発は,対麻痺者にとっても,リハビリテーション医療に携わる者にとっても期待が大きい.
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