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はじめに
関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)は免疫異常を背景に関節滑膜に初発する原因不明の慢性肉芽腫性炎症である.妊娠可能年齢の女性に多く発症し(男女比1:4),本邦での患者数は60万人余り(有病率0.5%)と推定されている.
RAの関節炎は手・指関節から対称性に発症することが多く,病期の進行とともに肘,肩,膝,足関節などへ波及するが,腫脹,疼痛により関節可動域(ROM)制限や筋力低下などの機能障害が生じる.また,関節炎の遷延化に伴う関節周囲組織の弛緩や線維化は関節の不安定性や拘縮の原因となり,増殖した炎症性滑膜組織(パンヌス)は関節軟骨や傍関節骨組織を破壊し非可逆的な関節変形を引き起こす.一方,発熱,貧血,易疲労性や血管炎,末梢神経障害などの関節外症状を合併することも多く,アミロイド性腎障害,間質性肺炎やRA頸髄症は生命予後に影響を及ぼす1).
このようにRAは全身を脅かす進行性の疾患であり,機能障害の進行により日常生活動作(ADL)が制限され生活の質(QOL)が低下していく.WesthoffらはHanover Functional Status Quesーtionnaireを用いたRA患者273名のADL評価結果をもとに,ベルリン近郊に在住するRA患者2,177名の機能予後について発症後5年以内に25.8%が要介助,3.7%が要介護となり,発症後30年では約半数が要介助,16%が要介護となる可能性を明らかにしている2).
さて,RAの薬物治療の歴史では19世紀末のアスピリンの発売,20世紀初頭の金製剤の使用,中期のコルチゾンによるRA治療の研究などエポックメイキングな出来事はあったが,近年まで滑膜炎の薬物コントロールは困難であり,外科的滑膜切除術を併用してもRAによる関節破壊の進行を阻止することはできなかった.しかし,1988年からメトトレキサートがRA薬物治療のアンカードラッグ(要となる薬)として使用されるようになり,さらに1998年の生物学的製剤の導入により「RAの進行を抑えることはできない」という治療概念は「薬物治療によりRAの寛解導入,あるいは治癒も可能である」という認識へと大きく変わっていった3).
本邦でも欧米に遅れること10年,1999年にメトトレキサートのRAに対する投与が認可され,さらに2003年からはRAに対するインフリキシマブの投与が始まり,2008年からは本邦で開発された抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブと合わせて4剤の生物学的製剤が臨床現場で使用可能となっている(図).
このように薬物治療の発展とともにRAも「治癒可能な疾患」になりつつあるが,高い薬価や合併症の問題などから生物学的製剤の恩恵は一部のRA患者に限られ,また,生物学的製剤によりRAが寛解しても,それまでに病期が進行しているため運動機能障害,能力低下が残存することも多い.
RAに対するリハビリテーション(以下,リハ)の必要性については論を俟たないが,2002年に発表されたRA治療ガイドラインでもRAの早期診断,薬物治療とあわせて発症早期からの患者教育とリハが推奨されている4).
RAでは病期にかかわらず,疼痛軽減と変形や拘縮,筋力低下など原疾患であるRAによる二次障害の予防,改善を目的にリハを行うことが重要であり,病期が進行した場合は身体障害の程度に応じて介護保険や身体障害者手帳を利用した住宅改装,補装具や車椅子の導入,在宅・施設介護なども積極的に利用していくことも必要となってくる.
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