Japanese
English
- 販売していません
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
関節リウマチ(RA)の障害構造1)は,遷延化する滑膜炎に伴う疼痛,腫脹,関節破壊などの心身機能・身体構造の異常,日常生活活動(ADL)や日常生活関連活動(APDL)の制限,地域・社会活動などへの参加の制約であり,肺・腎・血管障害やRA頚髄症は生命予後にも影響を及ぼす2).
1980年代にはすでにRAの関節破壊は発症後数年以内に急速に進行することが報告3)されていたが,1990年代までは有効な薬物治療がなく,RAは進行する関節破壊とそれに伴う機能障害がADL/APDL能力を低下させる疾患と考えられていた.
そのため,RAのリハビリテーション治療とは,低下した機能や能力あるいは生活の質(QOL)を少しでも改善させることを目的としたものであった.そして,RAによって破壊された腱や靱帯,骨・関節,脊椎などの機能再建には外科治療が選択されてきた4).RAの診断には1987年改訂RA分類基準(米国リウマチ学会)が用いられてきたが,早期診断・治療による関節破壊の進行抑制が重要であるとの考えに基づき,1994年に厚生省(当時)研究班や日本リウマチ学会が早期RA診断基準5)を発表した.
このように早期診断への試みが始まっても有効な薬物治療法がない時代が続いたが,1990年代後半にメトトレキサート(MTX)がRA治療のアンカードラッグ(第1選択薬)に位置づけられ,生物学的製剤のMTXとの併用療法の有効性6)が報告されると,薬物治療の早期開始を目的に2010年に米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)が新分類基準7)を発表した (図1).
日本人に対するこの新分類基準の感度と特異度は,1987年改訂RA分類基準や1994年早期診断基準と比較しても良好な結果8)であり(表1),本邦でも「鑑別診断を適切に行うこと」という日本リウマチ学会の付帯条件を得て広く使われるようになった.
その後,各国からRA治療ガイドラインやリコメンデーションが発表されたが9-11),いずれも早期診断に基づく生物学的製剤を含む薬物治療の早期開始を強く推奨している.
RAの治療概念は1998年(本邦では2003年)の生物学的製剤(インフリキシマブ)の上市とともに「薬物治療により寛解導入,あるいは治癒も可能である」と大きく変化(パラダイムシフト)し,RA病期が進行していても外科治療による機能再建や装具の活用によって多くのRA患者が新しい薬物治療の恩恵を受けられるようになった.さらに,薬物療法の治療指針や推奨・勧告も次々に改訂され,2010年には目標に基づいたRA治療(Treat to Target:T2T)が提唱12)されるに至ったが,このT2Tの基本原則「RAの主要な治療ゴールは症状のコントロール(臨床的寛解),関節破壊などの構造的変化の抑制(構造的寛解),身体機能の正常化(機能的寛解),社会活動への参加を通じて,患者の長期的QOLを最大限まで改善することである」はRAリハビリテーション治療の目的そのものである.
Copyright © 2017, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine. All rights reserved.