第45回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/横浜 《シンポジウム》痙縮に対する治療介入―座長/浅山 滉・正門 由久
装具療法
近藤 和泉
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1藤田保健衛生大学藤田記念七栗研究所リハビリテーション研究部門
pp.166-170
発行日 2009年3月18日
Published Date 2009/3/18
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はじめに
中枢神経系の障害による痙縮や異常歩行を装具でコントロールしようという試みは,1960年代に熱可塑性樹脂による装具が作られ始めた頃から行われてきた1).さらに神経生理学的なアプローチに痙縮治療のためのキャストやスプリント療法が取り込まれるにしたがって,装具に対してもよりきめ細かい工夫が考えられ,1980年代にいわゆる「筋緊張緩和デザイン」の概念が提唱されるようになった.しかし南アフリカのPeacockが1985年に米国に移って,筋緊張緩和のための選択的後根切除術がさかんに行われるようになり,さらに1990年代にはボツリヌス菌毒素の注入が広く行われた.また同時期からバクロフェンの髄腔内投与が開始されるなど痙縮に対する様々な治療法が利用されるようになったこともあり,装具の適用範囲は狭くなりつつある.
装具で痙縮を予防するための方策をおおまかに分けると,まず第一に痙性麻痺の初期で,活動性が高くなる前に筋・腱の伸張をはかっておく方法が挙げられる.これまで,下腿三頭筋の筋緊張を低下させるため,キャストや装具によって足関節を可及的背屈位に保つ試みがなされてきた.伸張を夜間にも行い,その効果を高めるためにnight splintが使われる場合も多い.さらに特定の反射誘発部位を刺激あるいは免荷することによって,起こっている反射を別な反射で中和したり,抑えたりする方法も提案されている.痙縮そのものに対する治療ではないが,痙縮と一緒に起こってくる筋の機能のアンバランスが,足部の変形を引き起こすことも多く,装具によって足部の構造的な安定性を高め,痙縮による変形を予防する必要がある.
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