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はじめに
脳性運動障害児の機能獲得の手段として,理学療法,作業療法などがあるが,歩行に至る下肢機能の向上に対しては,理学療法のみでは限界があり,手術や装具療法が重要な位置を占める.
脳性運動障害児において,理学療法が効果的である年齢は諸家により多少の開きはあるが,10歳程度までであるといわれている1).この年齢までに,社会適応性を最大限に引き出してやることが重要であり,それゆえその過程において使用される装具は,目的に応じた装具の処方が要求される.すなわち,患児が成長する過程における主動筋と拮抗筋のアンバランスで生じる変形や,不良肢位拘縮予防のための装具,また不安定な状態をコントロールするための装具,さらに機能訓練をサポートする装具,手術後の一時的使用や,残存機能増強のための装具等々である.しかし,その処方や適応において一定の方向はあるものの,明確な基準はなく,Sharrard Silverらの様に比判的意見も多い.たしかに脳性運動障害児に装具を処方する場合,一つの変形にとらわれず全身のバランスを充分考慮に入れなければ,装具装着によりさらにアライメントが乱れ,異常姿勢を増強することになりかねず,しかも障害タイプや重症度による装着法および内容が大きく異なり,加えて成長に伴い装具の持つ役割も変化していく事等,大きな問題が山積みされている.さらに患児自身からの訴えは非常に乏しく,その効果判定においても,我々処方する側の客観的評価に委ねられる部分が大きく,本当の意味での効果判定は確実なものであるとはいい難い.
我々は脳性運動障害児における装具の特異性を踏まえ,Physicalな面ばかりでなく,Psychologicalな面にも注意し,さらに全身機能における装具の効果,すなわち装具の障害に対する位置づけに,絶えず気を配ることが最低限必要であると実感した.このように,装具の持つ目的や適応にはかなりの幅がある事から,我々は肢体不自由児施設で,それぞれどのような使われかたをしているかを知るべく調査を行った.
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