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はじめに
装具とはJIS T 0101に定義されており,「四肢および体幹の機能障害の軽減を目的として使用する補助器具」である1).装具の目的は,変形の予防および矯正,病的組織の保護,失われた機能の代償または補助であるが,本稿では,リハビリテーション工学で注目されている「失われた機能の代償または補助する下肢装具」について概観する.
下肢装具は機能面から,長下肢装具(Knee-Ankle-Foot Orthosis;KAFO)および短下肢装具(Ankle-Foot Orthosis;AFO)に大別される.前者は大腿部より足底に及ぶ構造をもち,膝関節と足関節の動きを制限するものである.後者は下腿部より足底に及ぶ構造をもち,足関節の動きを制限するものである.ここでいう制限とは,関節可動域(Range of Motion;ROM)と自由度(動く方向)である.さらに,最近臨床で処方され始めた股関節を制限する装具がある.股関節継手付長下肢装具(Hip-Knee-Ankle-Foot Orthosis;HKAFO)と呼ぶ.股関節継手には外側股関節継手と内側股関節継手がある.
また,構成材料によりプラスチック装具,(アルミ合金)金属支柱付き装具,ハイブリッド装具などに分けられる.プラスチックも従来のポリプロピレン,高密度ポリエチレン,アクリルナイロンなどの他に,カーボンファイバーにプラスチックを含浸させたものなどが使われ始めている.しかし,カーボンファイバーは熱加工性が悪く,ポリプロピレンのようにヒートガンで暖めながら,現場合わせすることができない.また,破損した時の破断面が滑らかでなく,カーボンファイバーが皮膚に突き刺さるなどの問題があり,まだポリプロピレンの補強材として用いられる程度のことが多い.含浸するよいポリマーが開発されれば,軽くて強靭な有用な材料となるであろう.
狭義の装具とはいえないが,機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation;FES)も将来有望な「四肢および体幹の機能障害の軽減を目的として使用する補助器具」である.現状では,Hybrid Assisitve System(HAS)と呼ばれるHKAFOとFESを併用した装具が用いられている.これは,起立や歩行の安定性についてはHKAFOで,駆動力をFESで得るものである.また,KAFOの代わりにFESを用いる方法も市販・研究されている.
臨床的見地からは文献2)に詳しく書かれているので,ここでは工学的見地から説明する.
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