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はじめに
40歳の誕生日を迎えた時に同僚から「40歳は初老ですよ」と言われた。筆者自身,40歳になりたての頃は老化を意識することはなかったが,40歳代も後半にさしかかると,小さな文字が読みづらくなった。いわゆる老眼症状が出始めてからは自らの老化を意識するようになった。現在,50歳代半ばであるが,ADLで困る時がある。立って靴下をはく時にバランスを崩し,ふらつくことがある。バランスをつかさどる感覚の衰えもあるかもしれないが,大腿四頭筋の筋力が落ち,片足で立った時に支える力が弱くなったのだ。そこで,努めて大学の階段を使うようにした。研究室がある5階まで登るのがきつくなくなると,ふらつかずに靴下がはけるようになった。教科書に書いてあるように老化による筋力の衰えと筋トレによるADLの回復を実感する出来事であった。
人は誰でも年をとる。加齢により身体も老化していく。それは,脳性麻痺者も同様である。三島1)は,日本脳性麻痺の外科研究会が2009年度に健康に関して40歳以上を対象にして行ったアンケート調査から,移動機能能力の低下を感じた年齢は10歳代から始まり,30〜40歳代がピークであること,アテトーゼ型と混合型に上肢機能低下が多かったこと,特に,アテトーゼ型では移動能力機能低下の割合が高く,頸椎症との関連も推察されたと報告している。以前,OTとして勤務していた施設に,アテトーゼ型の方がいらっしゃった。ADLも自立され,仕事もしっかりとこなされていた。しかし時折,身体の痛みを訴えられており,よく「脳性麻痺は老化が早い」とおっしゃっていたのを思い出す。
以前,OTとして担当した,もしくは,かかわりがあった30〜50歳代になる4名の脳性麻痺者の方に今回,インタビューすることができた。語られた内容をもとに加齢よる変化に対してOTとして何ができるのか検討した。
なお,インタビューを行うにあたり,その目的を説明し同意を得て行った。また,写真の掲載についても同意を得ており,かつ,本人たちからの申し出により顔を隠さずに掲載する。
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