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はじめに
我が国における脳性麻痺児の療育は,1970年頃から肢体不自由児施設を中心に著しい進歩を遂げ,障害の治療・軽減に見るべきものがあったといえる.しかしその対応は余りに早期発見,早期治療と乳幼児期療育に傾きすぎた嫌いもないとは言えない.幸いにも近頃になって,その経験と知識の集積の中で,思春期さらに成人期脳性麻痺者に関しても注意が払われるようになりつつあると思われる.なかでも頸椎症あるいは頸椎症性脊髄症は能力不全をさらに強め,手術時の脊椎固定の方法論と相まって,整形外科的視点からすでに報告の多いところである.また四肢とくに股,膝の変形,それらによると考えられる移動能力レベルの低下も無視できぬものがあり,脱臼性(前)股関節症に対する腸腰筋,股内転筋などを含む軟部組織解離術,骨盤ないし大腿骨骨切り術また近位部,遠位部でのハムストリングの切離延長術などの積極的な試みが始まっているが,術後の機能訓練プログラムの問題とからみ,なかなかに困難を伴うものであり,今後に待つ点が少なくない.
乳幼児期から学童期の脳性麻痺児を主たる療育の対象としてきた我々の肢体不自由児施設では,彼らの成人に達したものの中から前述のような脊椎症や腰痛,股関節痛を訴え,折角に就労の機会を得,社会復帰をなしながら,再度長期の療育を余儀なくされる例がまま見られるようになってきている.それらの中から,学童期には比較的少なく,成人脳性麻痺者(ここでは18歳以上とした)にみられる,加齢と関係するかと思われる症状発現の典型例を述べるとともに,身体障害者療護施設および身体障害者授産施設に入所している脳性麻痺者について,必ずしも加齢ないし老化現象を背景にしているとはいえないまでも,加齢と関係するかと思われる症状があるか否か,日常生活動作能力の推移,またいわゆる俗に年をとったせいとされる2,3の事項を調査したのでその結果について検討して見たい.
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