Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.はじめに
脳性麻痺者の就労形態は,さまざまな形で各職業分野に見ることが出来る.
大別して,一般企業に就労する者,自営,福祉工場(職業を持って,安定自立する人),援産施設(一般,重度身体障害者),共同作業所など(一般就労形態はとれないが)に,就労する人があげられる.
それらの各分野に就労する脳性麻痺者には,理想的な職場を得た者もあるがおおかたは,底辺に近い状況である.この優劣差の原因は,第一に個々の障害度である.
現在の重度授産施設でまず問題としてあげられるのが言うまでもなく,脳性麻痺者が占める割合の増加と職能的重度化の現象である.
授産施設利用の対象者は,作業を充分消化し得る能力を持つ者である筈なのだが,実際には,作業能力の低い職能者でしかない.
「一般就労を困難とする者に,職業を与え,自活させる」と言う目的には,ほど遠いのが,実態である.
かつて授産施設目標の一つに脊損者を中心とした企業性の濃い工賃を目標とした仕事もあったが,利用者層の変化,つまり脳性麻痺者の占める比率の増加と共に,作業の内容や職種,施設機能目的にも変化を余儀なくされる場合も出て来る.
ある施設での作業には,新しい時代に応じたコンピューターのプログラムの作成やOA(オフィスオートメーション),WP(ワードプロセッサー)の分野に挑戦しつつある所も,出て来ている.一方施設機能目的にも,
1.ワーク・アクテビティショップ;収入にこだわらず,労働をする事によって社会への参加を自覚する,生甲斐を目ざす施設.
2.保護雇用;主として,収入を得ることを目的とした施設.
3.いずれにしても属さない,職業リハビリテーション専門の施設.
以上,三つの形を混合とする施設などその施設目標をも明確に要求されようとしている現在である.
ここにある一つの重度身体障害者授産施設に的をしぼり,その実態に焦点を合わせたい.
昭和56年4月現在の在籍者との比較:
通所20名,収容50名,計70名の重度授産施設.ここでも37名の脳性麻痺者が在籍しており,全体の約52%である.収容50に対し46%,通所20名に対し,70%である(表1).障害等級は,2級から6級で収容から考えて障害度も比較的軽い(表2).また,年齢の点では,収容より通所が全般的に20歳~30歳までの者も多く,若い層である.それに反して収容側は,平均37歳を示し,年齢層は高い.車椅子の使用状況は通所0,収容全体29名中11名(女6名)である.
通所には,2台の車が各ターミナルまでしか運行しておらず,自宅からは他の交通機関を乗り継いでいるものがほとんどである.
入所の径路は,更生訓練施設,次に養護学佼,在宅の順位となっている.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.