特集 高齢障害者の自動車運転
認知症者・高次脳機能障害者の自動車運転について
加藤 徳明
1
,
佐伯 覚
1
,
蜂須賀 研二
2
1産業医科大学リハビリテーション医学講座
2独立行政法人労働者健康福祉機構九州労災病院門司メディカルセンター
pp.726-731
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200224
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はじめに
日本では65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は2013年に約25%であったが1),今後も増加すると予測されている。高齢化に伴い高齢運転者が増加し死亡事故が増えたため,1997年には高齢者講習制度が新設された。この制度により死亡事故は減少したが,死者数のうち高齢者の占める割合はいまだに高い。
高齢化とともに認知症は増加し,高次脳機能障害の主な原因疾患である脳卒中は高齢者の割合が高い。外傷性脳損傷(traumatic brain injury:TBI)では,年齢別にみた重症TBI発生のピークが,15〜29歳の若年層から60〜84歳の高齢者層にシフトした2)。これは高齢化により転倒・転落を原因とするTBIが増加したためである。日常診療でも自動車運転を希望する高齢脳障害者は増加している印象があり,この1年間に当科で自動車運転適性評価を実施した脳障害者39名のうち,65歳以上は13名と3人に1人は高齢者であり,自動車運転は若年層のみの問題ではない。
アルツハイマー型認知症など変性疾患による認知症は進行性の疾患であり,医療者は運転中止の判断をすることが多い。一方,高次脳機能障害者ではTBI,脳卒中など原因疾患の治療やリハにより認知機能が改善する可能性があり,医療者は運転再開の可否の判断をすることになり,認知症者への対応と異なる。本稿では脳障害者の自動車運転に関する道路交通法の改正の変遷を説明し,認知症者と高次脳機能障害者に分けて対応を解説する。
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