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はじめに
医学の進歩に伴い,医学生が学ぶべき情報量は膨大となり,受動的な講義のみでは全範囲をカバーすることが困難になりつつある.国内外の医学教育領域において医学生が効率よく能動的・自己主導的に学習する教育システムの確立が喫緊の課題である7).解剖学は,医学や外科学の教育において最も重要な要素の1つであるが,履修時間に対して学ぶべき情報量は多く,かつ複雑な部位では空間的位置関係の理解ができず,モチベーションの低下が問題になることがある.エクステンデッド・リアリティ(XR)技術の代表的な手段である3次元(3D)ホログラムは,さまざまな角度から立体構造を確認できるため,2次元画像に比べて直感的な解剖理解を促進し,即時的および長期的な知識保持が向上することで,解剖知識(特に複雑な領域)の習得に関しての有用性が実証されている8).さらに,仮想現実(virtual reality:VR)空間でのトレーニングやシミュレーションは没入感に優れ,ゲームをしているような感覚(ゲーミフィケーション)で楽しみながら,場所を選ばず,患者に悪影響なく,即時フィードバックを受けながら何度でも反復練習ができることから高い教育効果が得られる6,9).そのため,医学教育領域においてXR技術は,効率よく能動的・自己主導的に学習する教育システムの確立に寄与するものとして期待されている.従来,医学教育は対面・実地で行われてきたが,COVID-19拡大による感染予防のために医療業務の遠隔化を余儀なくされた.そのような状況の中において,デジタルネイティブと呼ばれる現在の学生に質を確保した診断・手術の技術や知識を伝承するためには,デジタル環境の整備が急務である.そこで,本学では2021年よりXR技術を用いた医学教育を開始した.本稿では,XR技術を用いた医学教育の現況とわれわれの取り組みについて述べる.
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