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は じ め に
空間認識は,術前診断,手術計画,正確な手術手技,技術トレーニングをするうえで外科医として不可欠な能力である.CTやMRIから得られた二次元(2D)画像は,解析され,三次元(3D)モデルに再構成することができるが,多くの病院では,これらの画像を小さくて平面的なコンピュータ画面に表示しているのが現状である.さらに画像がこの表示の限られた領域内に提示される限り,臓器や病変の実際の深さ,および広範囲にわたる空間的位置関係の認識は不十分である.CTやMRIによる診断画像は2D画面を用いた診断科学を確立しているが,手術プロセスにおける3D空間情報や空間アプローチ方法も重要である.われわれは,CTやMRIから提供される3D空間座標から各臓器の形状データを抽出し,これをポリゴンデータに加工して実空間の3D座標上にマッピングすることで,患者の病態をより自然で空間的に理解できる可能性があると考えた.
2005年から国内で経皮的椎弓根スクリュー(PPS)が使用可能となり,最小侵襲脊椎治療(MIST)への応用がすすんできた(図1).本邦独自の医療機器や手技の開発 1~5)もMISTの普及に貢献してきたことは特筆に値する.しかしながら,MISTは低侵襲であるがゆえに,教育や技術の伝承に課題があることも事実である.手術技術では立体解剖の理解が不可欠であるが,医用画像は3D再構成を行っても平面モニターでの表示に限定されるため,正確な空間認識が得られず,手術現場での感覚とのギャップが生じることがある.特に低侵襲手術技術では手術領域の展開が狭いため,手術中の正確な空間認識がむずかしく,手術技術の教育や習得の障壁となりうる.
これらの課題に対処するため,近年普及しつつある仮想現実(virtual reality:VR)や,VRに時間と空間を統合した複合現実(mixed reality:MR),現在ではXRと総称される技術(図2)が活用可能であると推察した.本稿では,われわれが行った脊椎手術へのXR技術の適用事例と今後の展望,さらにはメタバースのMISTへの応用について紹介する.
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