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2021年より日本大学理工学部ロボティクスソサイエティならびに人工知能リサーチソサイエティと共同研究を開始した.そのラボで,ネコくらいの大きさの4脚ロボット(注:猫型ロボットではない)と,全長5mmに満たない6脚マイクロロボットを見せていただいた11).研究者のお一人から,「歩行はきわめて単純な制御で行われている部分があることがわかっています」と説明された.ロボットといえばマジンガーZとドラえもんしか知らないレベルである無知な私にとって,これらのロボットが歩く姿は,なんともいじらしいうえに,興味深かった.
ロボットはテーブルに置かれると,おぼつかない足取りでモジモジ動いていたのがやがて安定し,ゆっくりと歩き始めた.その様子は,まるで生まれ落ちたばかりの仔馬が誰にも教わらないのに歩き始めるのと似ているように感じた.研究のミーティングをそっちのけに,このロボットの運動制御について教えていただいた.このロボットは,central pattern generator(CPG) modelとして神経回路基板からトリガーを発し,筋の代用にサーボモータを搭載した脚でリズミックに「足踏み」だけを行う.すると,脚の固有角速度に対して脚先の圧力と位相に応じたフィードバックがかかる.これにより各脚間に位相差が生成され,受動歩行のメカニズムで次第に安定して歩き始める,すなわちリズミックな足踏みのみで「歩容を生成する」ロボットなのだそうだ.マイクロロボットは小さすぎて脚の動きを細かく制御する中央演算処理装置(CPU)を搭載できない.そこで,微小電気機械システムデバイスを用いたシンプルな信号によって制御しなければならず,このような機構が必須となる.実際にマイクロロボットも,老眼鏡がないと見えないくらいの小さな脚で,前述のロボットと同様に歩き始める.
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