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はじめに
神経根ブロックは,神経ブロック針の先端から局所麻酔薬やステロイド剤を神経根周囲に直接浸潤させることで消炎作用や疼痛経路を遮断する.頸椎症性神経根症や頸椎ヘルニアでは,神経根周囲に炎症があるだけでなく,発症から病悩期間が長くなると神経障害性疼痛成分も加わってくる.神経根部への局所麻酔薬の到達は,痛み経路の一次ニューロンを遮断するだけでなく,その後の2次ニューロン部における痛み増幅経路も抑制すると考えられる3).また,神経根ブロックは局所に集中して治療薬が到達するだけでなく,近傍の交感神経を遮断することで血行の改善につながり,また一時的運動神経の遮断がもたらす筋弛緩による末梢神経絞扼の改善効果がある.以上により,頸部神経根ブロックは上肢痛,頸部痛,頭痛などに対し有効な治療法であるが,施行の際はX線透視が必須であった.その際,解剖およびX線像を熟知する必要があった.X線像は基本的に骨のみの情報であるため,神経根周囲の解剖は術者の頭の中で構築しなくてはならない.頸部は脳と体幹をつなぐ部位であるため,神経,血管が多いだけでなく,各器官が狭い範囲に密集している.常に術者は副作用に注意しなくてはならない.特に,動脈注入やくも膜下注入時の対応を認識しなければ生命に関わることもある.そのため,神経根ブロックは習得するのに時間が必要であった.
その点,超音波ガイドで行うブロックはX線下ブロックに比較して,血管,神経,甲状腺,気管や骨の形状把握が容易なため,より多くのペインクリニシャンが施行するようになっている.しかし,一方で薬液の広がりが視認できないため,薬液が硬膜外腔へ広がったのか,末梢へ広がったのか,また血管注入があったのかは確認できない.確実に行うには,X線透視と併用がよいであろう.今回,超音波ガイド下頸部神経根ブロック行うにあたって,頸部解剖,適応,手技,今後と発展性に関して解説する.
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