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本書編集の谷戸祥之氏と松川啓太朗氏のお二人は,本邦におけるCBT法の先駆者で,その普及に情熱をもって取り組んでこられた.筆者も4年前からCBT法を腰椎の再建手術に取り入れてきた.以下,筆者の経験に基づいての書評となり,独断的評価と提言を含むが,ご容赦いただきたい.
CBT法は椎弓根スクリュー法(PS)の範疇に入れられてよいであろう.1950年代にVancouverのBoucherが始めた椎弓根スクリューは,頭内側から椎間関節を貫通し椎弓根を経由して,尾外側に刺入されていた.その後,椎弓根軸に沿って刺入される方法に代わり,広く行き渡った.2009年にHynesらにより報告されたCBT法では,スクリューは関節間部から刺入され,椎弓根の内尾側皮質骨を貫通するので,従来の椎弓根スクリューほどは椎骨のosteoporosisの程度に左右されないと考えられている.また,刺入点が正中に近くなるので,左右および頭尾側の展開がPSより小さく済むのも利点である.この点は,PS法では左右方向の展開がやや困難な腰仙椎で特に顕著である.本書は,経験豊かな数人の共同執筆であり,臨床経験に基づく有用な指摘,提言が多い.多少の難点として,PS法とCBT法の力学試験に関する点を挙げる.CBT法では,関節間部の強靭な皮質骨に直接スクリューが刺入されるので,刺入トルクはスクリュー径にあまり左右されないが,PS法では,椎弓根の皮質骨にscrew threadが食い込む程度の径のスクリューを使用して初めて十分な引き抜き強度と椎間安定性が得られる.したがって,CBT法とPS法の固定椎間の安定性比較は,両者の引き抜き強度を同一にして行われるべきであろう.しかし,本書に挙げられた比較力学研究では,ほかのCBT法とPS法の比較力学試験と同様に,この点が考慮されていない.PS法で適切な径のスクリューを使用されれば,刺入トルクと固定椎間の安定性のいずれにおいてもCBT法と大差はないと予測する.
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