- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
1.脳卒中の現状と復職要因
2017年(平成29年)現在,わが国で脳卒中有病者数は約112万人1)とされており,近年緩やかに減少傾向にある.そのうち20〜64歳は約16%であり1),復職や再就職を目標にしている方は一定数存在すると思われる.しかし日本での仕事復帰は40%程度といわれており2),復職はかなりハードルが高いといえる.佐伯ら2)は脳卒中労働者の復職が促進される要因として,若年,仕事復帰の意思が強い,ホワイトカラー,セルフケアが自立,会社や家族の支援がある,産業医との連携等を挙げている.逆に阻害する要因は,中高年,ブルーカラー,失語や注意障害等の高次脳機能障害,うつ症状等が挙げられている2).
2.復職や再就職の方法
就労支援(復職と再就職を含む)するためにどのようなポイントがあるか,具体的に説明していきたい.大きく分けると医療機関等から直接仕事に復帰する方法と,他の事業所等を経由して復職する方法がある.まず就労を支援する場合に理解しておくものとして「職業準備性ピラミッド」3)がある.下から健康管理・病気の管理・体調管理,生活リズム・日常生活,対人技能,基本的労働習慣,職業適性の5段階で準備性を示している.土台になる部分が安定することで,より上位の能力が活かせる仕組みになっている.脳卒中の就労支援では一般就労への意欲,危険への対処,報告や連絡,安定した出勤等の基本的な労働習慣と作業適正や作業量,作業スピード,仕事の効率,指示理解や正確性,作業環境の変化への対応等の職業適性がより大事になってくる.障害によって,対人関係,生活リズムや健康管理の訓練が必要な場合は,就労支援に時間がかかる可能性が高いといえる.そのため,まず就労支援を視野に入れた医療機関での訓練では,健康管理,生活リズム,対人技能の獲得の訓練がまず必要になってくると思われる.
Copyright © 2021, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.