講座 感覚の問題に注目しよう!・第6回【最終回】
感覚調整障害に対する作業療法支援
土田 玲子
1
Reiko Tsuchida
1
1NPO法人なごみの杜
pp.58-64
発行日 2021年1月15日
Published Date 2021/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202375
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はじめに
感覚統合理論を体系化した米国のOT,Anna Jean Ayres1)は,1960年代初期から触覚刺激に対する過剰反応に注目し,「触覚防衛」(tactile defensiveness)の概念を提出している.これは,特定の触覚刺激に対して拒否的,嫌悪的な反応を示す状態を指し,発達障害児を対象とした複数の因子分析的研究でこれが多動や注意散漫の症状と関連することを報告している1).その後この概念は,触覚系のみならず前庭系(Ayresの表現では重力不安・姿勢不安)等,触覚以外の感覚系にも認められ,さらに過剰反応のみではなく,低反応も認識されるようになったため,総合的に「感覚調整障害」(sensory modulation disorder)と表現されることが多い2).
長年,この感覚調整の問題に対してさまざまな介入実践が行われてきてはいるが,この問題が主観的であり,第三者には気づかれにくく理解されにくいため,一部の専門家に知られるにとどまっていた.近年になって,当事者の感覚体験を語った多くの報告や感覚統合の研究成果により,ようやく『DSM-5』にASD者にこのような問題がみられるとの記述が加わったことで,多くの専門職の関心を集めつつある.しかし,この概念の神経・生理・病理学背景に関する統一的見解(理解)は研究途上で,用語やその分類は研究者によってさまざまである.
そこで本稿では,支援例を紹介しながら,臨床実践を行ううえで重要なポイントを整理することにする.
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