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近年のパーキンソン病あるいはパーキンソン症候群の診療で目につく症状は,極端なすくみ足(freezing of gait,以下FOG)である.L-ドパが治療に導入され普及する以前にはほとんど記載されることがなかったため,FOGとL-ドパによる長期服用との関連も議論されている.一方,進行性核上性麻痺(PSP)では,本特集で紹介されているように「進行性すくみ足」を主徴とするタイプに接する機会が増しており,L-ドパ未投与例も多い.しかし,FOGは古くから知られており,歩行失行として論じられることもあった.近年のヒトの起立二足歩行の研究では,中枢パターン生成器(central pattern generator:CPG)を想定した知見にも興味深いものがある.
19世紀後半から,医療では疾患重症度の指標として日常生活における活動に着目するようになった.治療が悲観的にとらえられる時代の長かった脳神経疾患では,パーキンソン病でL-ドパの導入に伴う臨床治験が企図されたときに,古典的な三徴候を中心に神経学症状を点数化する重症度評価も複数考案されたが,日常生活での活動の制約を組み込んだHoehn & Yahr分類が評価の主軸として採用された.今日の医療では疾患に影響された個人の機能(functioning)の指標として活動が重視されるが,わが国では日常生活の「activities」が「動作」と訳されて普及したことから,活動に焦点を置く治療や介護でも動作訓練として理解されているかのごとくである.英米で個人別に意義のある活動に焦点をあてたトリートメントの思想が普及したのは,1980年代のことである.とはいえ,遅ればせながらわが国でも必要な支援の提供により,社会活動に参加する取り組みが拡大していることが本特集記事でも明らかであることから,訳語にこだわる必要はないのだろう.
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