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Key Questions
Q1:なぜ急性期頸髄・脊髄損傷者に対する作業療法が必要なのか?
Q2:作業療法を行ううえで知っておきたい頸髄・脊髄損傷の合併症とその対策は?
Q3:人工呼吸器装着中の高位頸髄損傷者に行う早期ADL向上を見据えた作業療法とは?
はじめに
脊髄損傷(以下,脊損)は,突如として損傷高位以下の運動障害,感覚障害,自律神経障害1)をきたし,四肢麻痺はもとより,循環,呼吸,排尿,排便,体温調節,褥瘡,そして精神等に多くの機能障害をきたし生活を一変させてしまう.急性期では受傷部脊椎の安定性が最重要で,整復固定されていれば,リハビリテーション治療施行上,制限はほぼなくなる.受傷部の安定性の確認がまず重要であるため,医師の診断を仰ぐ.
高位の頸髄損傷(以下,頸損)では,呼吸筋の麻痺や脊髄ショックにより,救命のため人工呼吸管理となる可能性があり,急性期では全身管理を行う集中治療室(ICU)で救急科医師や看護師が必死に救命治療に当たっている.しかし,ICUから積極的なリハビリテーション治療が行われていない.その要因の一つは,ICUの急性期頸損者が人工呼吸器や点滴,ドレーン等の多くの医療deviceによって動作が制限されているからである.特にOTによるICU治療報告は少ないが,本来ならさまざまな工夫を行えるOTこそ力を発揮できる.
著者らは,救命が成功した場合,直ちに機能維持・向上を図るために可及的早期から作業療法を開始している.肝要なのは,われわれOTも必死になって生命予後を改善させ,機能を予後予測以上にするという気概をもつことである.そのような強い意志がなければ,生命予後も含めて最良の日常生活動作(ADL)の獲得は困難である.
本稿では,急性期頸損・脊損者に対する作業療法の必要性,作業療法施行時の医学的課題となる合併症とその対策について述べ,筆者らが行う急性期作業療法の実際について述べる.
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