増刊号 急性期における疾患別作業療法
第3章 急性期の運動器疾患の作業療法
4 早期から活動を向上するために必要な急性期頸髄・脊髄損傷の病態と作業療法の要諦
寺村 健三
1
,
坂本 あきな
1
,
西山 涼子
1
,
梅本 安則
1
,
小川 隆敏
2
Kenzo Teramura
1
,
Akina Sakamoto
1
,
Ryoko Nishiyama
1
,
Yasunori Umemoto
1
,
Takatoshi Ogawa
2
1和歌山県立医科大学附属病院
2恵友病院
pp.878-884
発行日 2023年7月20日
Published Date 2023/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203471
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概要
脊髄損傷は,突如として損傷高位以下の運動障害,感覚障害,自律神経障害1)を引き起こし,循環,呼吸,排泄,体温調節,褥瘡,精神等の多くの機能障害や合併症を来たし,生活を一変させてしまう.胸髄以下の損傷を臨床現場では脊髄損傷(以下,脊損)と呼び,対麻痺が生じる.頸髄損傷(以下,頸損)による四肢麻痺は,脊損の中でも最も重篤な状態であり,呼吸筋の麻痺や脊髄ショックにより,人工呼吸管理が必要となり,集中治療室(intensive care unit:ICU)で治療が行われる.肛門括約筋の随意収縮がなく,S4-5領域の感覚と運動機能が消失していると完全麻痺と判断され,損傷高位が上位であるほど,ADLに重度の介助を要す.一方,近年では不全麻痺の中でも頸髄中心性脊髄損傷による上肢優位の麻痺が多くなっている.不全麻痺ではあるが,受傷者が高齢者である割合が高く,受傷前からの身体機能低下と相まって,受傷後のADLの低下とその介護が社会的な問題となっている.
頸損・脊損者に対しては,ICU管理から作業療法を開始することができれば,救命治療と同時に機能改善や活動の向上に役立ち,結果的に生命予後の改善につながる.つまり,作業療法はICUにおいて重要な治療手段の一つである.
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