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特集 OTの臨床で使える運動・スキル学習の知識と実践
中枢神経系疾患に対する上肢機能のスキル学習のために—「その具体的考え方と臨床場面」における一考察
Skill learning of the upper extremity function for disorder of the central nervous system:Considerations of a specific idea and clinical application
山本 伸一
1
Shin-ichi Yamamoto
1
1山梨リハビリテーション病院
pp.30-36
発行日 2018年1月15日
Published Date 2018/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201158
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Key Questions
Q1:脳の機能から学ぶことは?
Q2:感覚-知覚への介入原則とは?
Q3:中枢神経系疾患に対するアプローチの指針とは?
はじめに
中枢神経系疾患の上肢機能に対するアプローチとしては,①片手(非麻痺側)での実用・自立訓練や,②両手または麻痺側手への促通効果を促し自立へと導く訓練等があるだろう.どれかに固執,偏ることは対象者の能力を低下させる.たとえば,あまり動かない手・肩の痛みを放っておくことは,対象者の潜在性を阻害してしまう.臨床の現場では十人十色の像がある.弛緩手,痙性手,筋萎縮・拘縮手,しびれた上肢,痛み,感覚過敏・鈍麻・脱失,失調症,振戦等,その症状は数えきれない.軽度であろうが重度であろうが,どのような方も私たちの対象となる.そして対象者は,①と②の双方を望んでいる.どのようなニーズにも応えるのがOTである.
一方,運動学習という観点から考えてみると,通常では感覚系と運動系の協応関係を伴う学習のことをいう.感覚-運動学習,または知覚-運動学習といわれることも多い.スポーツ,楽器の演奏,あるいはタイピング等はその例であろう.中枢神経系疾患,とりわけ脳卒中対象者に対しては,神経科学に基づいた介入であって,かつ運動学・解剖学等の医学的背景のもと,運動学習を提供・実践することが重要である.
本稿では上肢機能の学習力の向上のために,①脳の機能として,姿勢制御と精緻運動のプログラムのシステムの再確認,②介入における臨床的背景(感覚-知覚)の原則等,③具体的臨床場面の一例を取り上げ,紙幅は限られるが,それらに基づいた作業療法について再考する.
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