Japanese
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特集 神経研究の方法論—その新らしいアプローチ
中枢神経系の感染についての考え方と手技
New Concepts and Techniques Concerning Infection of CNS
大谷 杉士
1
Sugishi Ohtani
1
1東京大学医科学研究所
1The Institute of Medical Science, Univ. of Tokyo
pp.509-518
発行日 1969年11月25日
Published Date 1969/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904623
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Ⅰ.緒言
原因不明の中枢神経疾患を診(み)たときに,中毒だろう,感染症ではないかとか,あるいは遺伝性疾患にちがいないとか,さまざまに推測する。感染症ではないかと推測する根拠は,これまでの経験からいうと,流行する,あるいは類似の疾患が多発するという事実におかれていた。だが最近では必ずしもそうではない。現在では感染症なる概念と流行病とか伝染病とかいう概念とは明らかにちがうもので,一人だけ発生しても感染症は感染症なのである。一般の感染症についてもそうだが,中枢神経系の感染症についてはとくにそうである。もちろん流行病,伝染病の形で発生した場合にも感染症と推測するけれども,そのような脳炎はたいてい病因論の解明は終つており,問題なのはそうでない型の感染症だと言い換えてもよい。
ウイルス性脳脊髄炎ではなかろうかと推測したら,その次は病原微生物を分離し,その病原微生物を実験動物に接種して,自然の病気を再現するという手続きを踏むことになる。この過程で,意識するしないは別として,研究者の行動を支配して来たのはKochの3条件であつた。だが,ここで取りあげようとしているウイルス脳炎のばあいに,Kochの3条件がどのように適用されるべきかについてはさまざまな問題がある。
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