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Key Questions
Q1:遂行機能障害とは?
Q2:脳の重層的メカニズムとは?
Q3:手続き学習および運動学習とは?
遂行機能およびその障害とは
Executive function(遂行機能または実行機能)という用語を明確に規定したのはLezak1)であるといわれている.遂行機能とは,「目的に適った行動の計画,実行」である.遂行機能は,認知的階層構造の中で,記憶・知覚・言語等の要素的な認知機能より「より上位(superordinate)」に位置づけられるシステムである.前頭葉機能を包括的に含む概念だが,イコールではない.むしろ脳の後方領域に蓄えられた行動スキーマを前頭前野が時系列に沿って実現していくというイメージである.また,遂行機能と関連する他の前頭前野機能,すなわち,短期記憶,ワーキングメモリ,創造的思考・発散性の推論,知能,注意の分配能力等が複合的に関与するものと推測される.
遂行機能障害ないし遂行機能検査の成績低下は,脳のどの部位の損傷でも生じるといえる2).遂行機能そのものの障害というためには,逆に注意やエピソード記憶,空間認知,知能等の基盤となる認知機能は保たれていることが重要である.遂行機能障害は,行動の開始困難や自発性の減退,認知ないしは行動の転換障害,すなわち保続や固執,行動の維持困難や行為の中断や中止の困難,衝動性や脱抑制,誤りの修正障害等によって引き起こされる3).具体的には,遂行機能障害があると,食事のメニューを考えるところから始まり,材料を買いに行き,実際に調理し,味見をし,片づけまで行う料理という一連の活動や,旅行計画を立てて,準備し,実際に旅行に行く等という一連の活動が困難となる.すなわち,遂行機能とは,①目標の設定,②プランニング,③計画の実行,④効果的な行動という4つの要素を含んだ,目的をもった一連の活動を有効に成し遂げるために必要な機能といえる4).
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