増刊号 上肢・手の機能と作業療法—子どもから大人まで
第3章 疾患別 上肢・手の困難事例へのアプローチ—具体的介入例とポイント
17 上肢欠損と筋電義手
柴田 八衣子
1
Yaeko Shibata
1
1兵庫県立リハビリテーション中央病院
pp.835-840
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201013
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はじめに
まず,「上肢欠損」とは,「上肢の先天性奇形・欠損」のことで,生まれつきに上肢の一部が欠如していることである.先天性上肢欠損の多くは原因不明で,薬物等の因子は稀であり1),正常な受精卵が発育する過程で何らかの要因により障害が起こり偶発的に発生する先天性絞扼輪症候群〔羊膜索症候群:羊膜の絞扼により,指趾に切断(横断的)や絞扼輪が生じる〕等が原因に挙げられる.
後天性の切断の場合は,今までに存在していた上肢機能の喪失であり,すでに獲得していた技能(機能)の喪失である.しかし,先天性の場合は,生後よりその部分は存在しないため,乳幼児期から日々の生活で上肢を使用する際に代償性技能を習得し,障害と共存しながら成長している.
次に,「筋電義手」とは,「筋電電動義手」のことで,バッテリーから供給される電力で手先具にあるモーターを動かす.筋電義手を構成する部品は,手先具(ハンド),継手,バッテリー,電極(増幅器),ソケット等である(図1).その操作方法は,骨格筋の筋収縮時に発生する微量な筋電位を表面電極で検出し,電極の筋電増幅器で増幅し,その信号を使って手先具を制御する.主に伸筋群で手先具を開き,屈筋群で手先具を閉じる.筋電義手の利点としては,①手先具の装飾性(ハンド型が主流),②把持力,③装着の簡便さ,④ハーネスに干渉されないリーチ範囲,⑤軟らかい物品の把持がしやすい等がある.
本稿では,「(先天性)上肢欠損」の上肢・手の機能を理解したうえで,上肢欠損児・者に対する選択肢の一つである道具(ツール)としての「筋電(電動)義手」の活用や有用性について述べたい.
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