増刊号 上肢・手の機能と作業療法—子どもから大人まで
第3章 疾患別 上肢・手の困難事例へのアプローチ—具体的介入例とポイント
18 —脳性麻痺①—痙直型—母子入院中の片麻痺児に対する母親への支援例を中心に
砂古口 雅子
1
Masako Sakoguchi
1
1森之宮病院
pp.841-845
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201014
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痙直型脳性痺児は,上位運動ニューロンが損傷された場合に起こり,四肢の伸張反射の亢進(すなわち痙縮)を主とする随意運動の障害,姿勢異常(正常からの逸脱)を特徴とする.脳性麻痺児の中でも約70%と多くの割合を占める.障害の分布によって,大まかには,①痙直型四肢麻痺(spastic quadriplegia:SQ),②痙直型両麻痺(spastic diplegia:SD),③痙直型片麻痺(spastic hemiplegia:SH)の3つのタイプに分けられる.近年,特に脳室周囲白質軟化症(periventricular lekomalacia:PVL)に皮質脊髄路が巻き込まれたことを原因とする痙直型両麻痺児が増えている.
痙直型(SQ,SD,SH)の子どもたちの上肢・手は,過剰な同時収縮により運動性が低下しやすく,努力性に使用するため,協調性や巧緻性の発達が不十分となる.特に末梢部よりも中枢部に緊張が高いことが多く,上肢が体幹からの影響を受けやすく,上肢における可動性のある支持も発達しにくいため,座位や立位の発達も阻害される.また,連合反応の影響を受けることで全体的運動パターンとなるため,一側上肢内での分離も不十分となり,体幹と頭部,頭部と眼球運動の分離も不十分となる.その結果,姿勢を安定させても手元を見ることができず,手の協調した活動や眼と手の協応の発達も阻害される.
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