増刊号 上肢・手の機能と作業療法—子どもから大人まで
第3章 疾患別 上肢・手の困難事例へのアプローチ—具体的介入例とポイント
10 中心性頸髄損傷者に対する箸動作への介入—装具療法を用いて
福井 篤志
1
,
加藤 敏一
1
,
横山 雄
1
,
西本 和平
1
Atsushi Fukui
1
,
Toshikazu Kato
1
,
Yu Yokoyama
1
,
Kazuhei Nishimoto
1
1星ヶ丘医療センター
pp.795-800
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201006
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はじめに
全国脊髄損傷データベースの1997〜2006年度(平成9〜18年度)の分析結果1)によれば,脊髄損傷による麻痺は圧倒的に頸髄レベルが多く,全体の70.8%を占め,四肢麻痺の割合が増加している傾向にある.また,完全麻痺と不全麻痺では,不全麻痺が増加傾向にあると報告がされている.当院では2006年4月〜2016年(平成28年)3月までの10年間に244例の不全頸髄損傷者が入院し,増加の傾向にある.
不全頸髄損傷の中でも臨床現場においてよく経験する型は,Schneiderら2)により報告された中心性頸髄損傷である.運動麻痺の程度は下肢よりも上肢に顕著である.これはJimenezら3),Leviら4)により,脊髄の中心部は皮質脊髄路の役割があり,皮質脊髄路の大径線維は外傷に対して易損傷性があるためと指摘されている.
そこで本稿では,中心性頸髄損傷を中心に述べることとし,把持機能の回復が遅延した中心性頸髄損傷の患者に対して装具療法を実施した事例を提示する.具体的にはすでにテノデーシスアクションによる横つまみが獲得されている患者に,一時的に手関節固定装具を装着し,手内筋による対立,指腹つまみの基本動作を反復した.その結果,手関節固定装具をはずした後でも指腹つまみ,三指つまみが可能となり,良好な箸操作を獲得することができたので紹介する.
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