増刊号 上肢・手の機能と作業療法—子どもから大人まで
第3章 疾患別 上肢・手の困難事例へのアプローチ—具体的介入例とポイント
11 認知症の上肢機能
田丸 佳希
1
,
松下 太
2
,
内藤 泰男
3
,
西川 隆
3
Yoshiki Tamaru
1
,
Futoshi Matsushita
2
,
Yasuo Naito
3
,
Takashi Nishikawa
3
1四條畷学園大学
2森ノ宮医療大学
3大阪府立大学
pp.801-805
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201007
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はじめに
認知症は,アルツハイマー型認知症(以下,AD)をはじめとする進行性の変性疾患に代表される.認知症の症状は,主に記憶障害や見当識障害等の中核症状と,徘徊や暴力,幻覚,妄想等の周辺症状(行動・心理症状:以下,BPSD)の2つに大別され,認知症の人に対する作業療法はBPSDの軽減を目的に実施されることが多い.一方で,一般病院や急性期病院等では,対象者が認知症を有しているとしても,脳卒中後遺症や骨折等の認知症以外の疾患でリハが処方されることが多く,認知症そのものの症状に対する作業療法というよりも,認知症以外の疾患をターゲットに身体機能の回復を目的とした作業療法が実施される.
ADは,軽度の段階では身体機能の低下は目立たないが,進行とともに錐体外路症状等が出現し,基本動作や手段的日常生活活動の低下を引き起こすことが知られている.したがって,認知症が重度になり,四肢の拘縮等が進んでくると,身体機能へのアプローチが行われるようになる.いずれにせよ,認知症に対する作業療法を実施する際に,認知症が重度となって寝たきりにならないかぎりは,身体機能に着目されることは少ないといえる.
しかしながら,近年では初期段階のADで,上肢運動機能障害1)や手指巧緻動作の低下2)等が報告されており,初期段階のADの上肢運動機能障害に対するアプローチの必要性について示唆している報告3)もある.
本稿では,まず加齢と上肢機能の関連を解説し,認知症の代表的な疾患であるADにおける上肢機能の特徴を述べ,認知症の重症度と上肢機能の関連について,われわれが行った実験結果を基に考察を加えて解説する.
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