増刊号 上肢・手の機能と作業療法—子どもから大人まで
第3章 疾患別 上肢・手の困難事例へのアプローチ—具体的介入例とポイント
4 —脳血管障害④—浮腫手
和氣 良彦
1
Yoshihiko Wake
1
1医療法人青樹会 一之瀬脳神経外科病院
pp.760-764
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200999
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はじめに
浮腫は“組織間隙に生理的な代償能力を超えて過剰な水分の貯留した状態”と定義されている1).脳卒中発症初期の麻痺肢は,弛緩状態によって筋収縮が阻害され,不動状態や筋ポンプ作用の機能不全に伴う静脈・リンパ還流障害により浮腫を発生しやすく,特に麻痺側上肢・手に浮腫が残存することが多い.また,浮腫が残存する時期に拘縮が発生しやすく,浮腫が軽減されている時期には重度の拘縮を呈している場合が多い2)といわれている.
脳卒中発症後の経過の中では,歩行やADLの各動作が何とか行えるようになっても,麻痺側上肢・手に生じた拘縮や痛み等の二次的な問題によって,麻痺側上肢の動作参加が制限される.またその影響は,“対象を操作する”といった手の機能発揮を阻害するだけでなく,代償パターンや努力性を招き,環境と対面する構え等の全身反応にも強く影響を与えることとなる.そのため,浮腫手を呈した脳卒中患者には,浮腫の原因やそれがもたらす二次的障害の発生要因を考慮した治療介入が必要であり,将来的な手の機能発揮のために,早期からの継続的な治療介入が必要とされる.
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