講座 これだけは知っておきたい! 解剖・運動学にもとづいたROM治療・最終回
浮腫手(弛緩手)
廣田 真由美
1
,
飯室 達也
1
Mayumi HIROTA
1
,
Tatsuya IIMURO
1
1石和温泉病院
pp.268-273
発行日 2013年3月15日
Published Date 2013/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100073
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はじめに
私たちの手は,直立二足歩行と言語の機能と協応しながら進化し,その過程とともに解剖学的な構造を変化させ,他の動物には類をみないほどの精巧な動きを可能とした.そして,知覚探索-操作器官として大きな役割を担った人間の手は,私たちの生活の基盤のみならず,文化や芸術,スポーツ分野への発展に大きく寄与してきたものである.つまり,手は視覚とともに外部環境の情報(感覚)を取り入れる窓口となり,人間らしい適応的運動行動を導くことに大きく貢献してきたものと考える.
しかし,多くの脳損傷者の麻痺手は,痙縮や拘縮,変形,感覚障害等の二次的障害から,知覚探索-操作器官としての機能を十分に発揮することが困難となり,さらには上肢が一役を担う姿勢コントロール(支持・バランス反応)にも大きな影響を与えることとなる.そして,脳損傷者自身が抱く「動かない,動きにくい」という手のイメージは,次第に「勝手に動く,邪魔になる」というマイナスイメージへと構築化され,自身のボディスキーマのゆがみを招くものとなる.
そこで,本稿では脳損傷者の早期の段階にみられやすい浮腫手(弛緩手)に焦点を置き,機能的役割の再獲得に向けた可動域改善について紹介する.
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