リカバリーショット
たまご焼きができるまで
佐々木 智子
pp.158-162
発行日 2017年2月15日
Published Date 2017/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200841
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私は21歳のときに特定疾患の一つであるもやもや病と診断された.高校を卒業して社会人(レジのチェッカー)としてようやく仕事に慣れはじめたころだった.もやもや病は父が患っていたので,どんな症状が出るのか少しは知っている程度だった.難病指定と言われても,“手術すれば治るんでしょ?”と軽く考えていた.なぜなら,父が1回目のバイパス手術を受けてから数カ月して2回目の手術を受け,かれこれ十数年経っているが,その間何の症状もなく,サーフィン,スノボ等,何でもできて普通の日常生活を送っていたから…….
ある日,突如として症状が出た.「もやもや病」という言葉が頭をよぎったが,「今のなんだったのだろう? きっと気のせいだ」と思い込もうとしていた.症状が出たのは,手術するときまで後にも先にもこの1回きりだけだった.父は「気のせいや!!」と言ったが,母が「気のせいかもしれないけど病院に行こう」と勧めてくれ,検査入院.しかし,このとき,父の病歴があったことと,母がすぐに病院に連絡してくれたことで,もやもや病が発見された.MRIの結果,すでに左右両側の血管が細くなっており,最も緊急性が高かった右側のバイパス手術が行われた.そして,数カ月後,左側の手術が行われた.それから5年後にまさかの脳梗塞.でももし“気のせいだ”と思い込んだままなら,脳梗塞の後遺症はもっとひどかったかもしれない.
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