扉
たまにはスポーツ医学もいかがですか?
谷 諭
1
1東京慈恵会医科大学脳神経外科
pp.101-102
発行日 2017年2月10日
Published Date 2017/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203459
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私が卒業後すぐに入局した東京慈恵会医科大学の脳神経外科学教室には,当時,中村紀夫教授,関野宏明助教授,そして坂井春男先生がおられ,サルの外傷実験が盛んに行われていました.新人である私たちは,実験で頭を揺さぶられた直後のサルのバイタルを必死にとることが仕事であった記憶があります.卒業したての新人にとっては,「頭部外傷って,被ってしまったら終わりだなー」と,インプリンティングされた感がありました.その後はというと,私自身は卒後3年目に派遣された都立神経病院での経験が,慈恵の伝統芸とは異なる脊椎脊髄外科への道を歩むきっかけとなった感があります.それ以来,マイノリティーではありますが,もう33年も地道にその道を歩んでいます.
そのような中で,東京ドームの隣にある後楽園ホールで行われるプロボクシングの試合のリングサイドドクターとして医局の行事さながらに派遣され,砂かぶりのようなリングの脇に座る仕事も多くありました.選手の汗と鼻血を浴び,そして,リングサイドの喧騒の中で,「なぜ,ボクサーはパンチでノックダウンするのだろう?パンチを受けた瞬間の頭の中はどうなっているんだろう?」という極めて原始的な疑問がふつふつと湧いてきました.そんな疑問を少しでも解決したいと思い,また,その一部がわかれば,予防医学の観点からもスポーツ現場での悲惨な事故を減らせるのでは?そして,そのほうが外傷の治療学の進歩より早く社会的に結果が出るのでは?と厚かましくも思いました.
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