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はじめに
今回は,少し“辛口”で話を進めていきたい.
筆者(やさき)は,東京都老人総合研究所(現,東京都健康長寿医療センター)をかわきりに,米国の病院やリハセンターで,また帰国後は教育分野でも仕事をしながら,さまざまな病院やリハセンター等で臨床経験を積み重ねてきた.今も可能なかぎり,臨床指導を行いつつ自らの技術を磨いている.そこで,筆者はいろいろな患者に出会い,学ばされている.
最近,専門教育(実習地訪問)をみていて気になることがある.それはさまざまな疾患の治療訓練期間が,筆者が体験してきたときより長いことである.そしてセラピストの多くがその治療期間の短縮に向け,“努力”しているようにもみえないことである.たとえば,橈骨遠位端骨折や上腕骨近位端骨折後の患者を数年“みている”ことがある.それは,時間と医療費の無駄とも思える.
そのような治療を受ける患者は,“治していただく”という雰囲気を漂わせている.その代表的な光景が,患者が訓練室に入るなり,治療用ベッドに横たわる様子である.そして,患者はそのまま治療訓練を待ち,受ける.筆者も,肘関節の治療訓練については臥位で実施する場合が多いことは否定しない.この姿位(posture)は,治療訓練において固定肢位を確保しやすいから選択する.ただ,この受け身の治療環境は患者側のみの問題ではない.われわれセラピスト側にも問題があると考える.
そこで,今回はより早く,一歩一歩“使える手”,いや“使いたくなる手”に近づけるための方策を考え,無駄をなくすために,われわれがどのように,どのような心構えで,患者に接していかねばならないか,若い共同執筆者と共に考えてみたい.
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