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はじめに
平成9年4月からの難病患者福祉推進事業の施行に伴い,地域においてホームヘルプ,日常生活用具給付などの支援が可能となった.このような事業を機能的に推進するためには,地域で生活する難病患者が日常生活を営むうえで問題となる日常生活活動(activities of daily living;ADL)や能力障害(disability)を適切に評価することが必要である.現在わが国では在宅患者のADLの評価には,厚生省「障害老人日常生活自立度」判定基準(以下,厚生省判定基準)1)が用いられることが多い.しかし,これは移動と身辺処理からなる基本ADL(basic ADL)の評価ではないため,更衣や整容などの動作が自立しているか否かといったADL領域の個々の評価が不可能であり,在宅で生活するうえで問題となる能力障害が明確になりにくかった.
一方,代表的な基本ADL評価として汎用されているBarthel Index2)は,在宅における評価が全項目自立と判定されても,必ずしも自立生活可能を意味しないことがある.このような背景から,家事遂行や金銭管理などの手段的日常生活活動を含めた尺度である拡大ADL尺度3)が開発され,在宅脳卒中患者に対する有用性については報告されているが4),在宅の難病患者についての検討は未だ行われていない.また,ADLのみならず,日常生活にかかわる広範な能力障害の評価尺度として開発された英国人口統計情報局社会調査部による評価5)(OPCS disability instrument,以下OPCS)は,イギリスでは障害者に対するケアプランに用いられているが,本邦での使用の報告は少ない.
本研究は在宅神経筋難病患者を対象に,厚生省判定基準,Barthel Index,および拡大ADL尺度のADL評価尺度と,OPCSによる能力障害の評価尺度を用いた評価を実施し,各評価尺度の特徴を明らかにすることを目的とした.
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