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はじめに—神経難病の定義と目標(生活の質の向上)
神経難病註とは脳,脊髄,末梢神経,筋に病変をもつ疾患のうち,疾患修飾薬(disease modifying drug)による疾患原因を制御する治療法が未確立か,あっても十分に進行を抑制できない疾患群と定義でき,成人発症/小児発症を問わない.
難病と言われる所以は,さまざまな機能障害の進行のため,日常生活動作(activities of daily living:ADL)の悪化が繰り返され,患者・家族だけでなく,医療福祉従事者にとっても対応が容易でないからである.神経難病医療の目標は生活の質(quality of life:QOL)の向上であり,それは患者の生活が「うまくいっているか/満足できているか」を計量心理学的に本人評価したものに対応する1-3).一方,健康関連QOL〔例として日本語版EuroQol-5Dimention-5Level(EQ-5D-5L)〕は,世界保健機関(World Health Organization:WHO)の健康を基準とするため,健康状態に戻り得ないと定義される難病に対する緩和やリハビリテーションの有効性の科学評価法にはなり得えない2,4)(ただし,難病に対する画期的な新規治療法の臨床試験評価には使用できる).
難病医療におけるQOLについて,筆者らの研究グループは2000年からアイルランドのO'Boyle教授と国際的な研究(http://seiqol.jp)を行い,WHOの健康状態に戻せない疾患領域すなわち,緩和・難病医療におけるQOL評価尺度は個人の生活の質評価法(schedule for the evaluation of individual quality of life:SEIQoL)が最も妥当だと考えてきた1-3).SEIQoLは患者自身が重要な5つの生活分野を選び定義・命名するため質的評価が可能で,それぞれを患者がVisual Analogue Scale(VAS)評価により重み付け平均しglobal indexとして量的評価するものである.疾病や状況の変化に適応して,重要な生活分野をダイナミックに変化させながら生きている患者その個人のQOLを評価できる3,5).
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