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Key Questions
Q1:認知症が疑われる方を受診につなげるにはどうしたらよいか?
Q2:もの忘れ外来を受診された方には,どのように対応すればよいか?
Q3:認知症のある方の家族支援における,専門職の役割は?
はじめに
わが国では,2012年(平成24年)に「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」が示された.オレンジプランでは,①標準的な認知症ケアパスの作成・普及,②早期診断・早期対応,③地域での生活を支える医療サービスの構築,④地域での生活を支える介護サービスの構築,⑤地域での日常生活・家族の支援の強化,⑥若年性認知症施策の強化,⑦医療・介護サービスを担う人材の育成が示されている.早期診断・早期対応を行うための具体的目標として,認知症の早期診断等を行う医療機関を2017年度(平成29年度)までに約500カ所整備することが掲げられた1).
また,2012年には介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律が施行された.ここでは,①医療と介護の連携の強化,②介護人材確保とサービスの質の向上,③高齢者の住まいの整備,④認知症対策の推進,⑤保険者による主体的な取り組みの推進,⑥保険料の上昇の緩和が示されている.高齢者が地域で自立した生活を営めるよう医療,介護,予防,住まい,生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の実現に向けた取り組みが進められている.地域包括ケアシステムでは,①医療との連携強化,②介護サービスの充実強化,③予防の推進,④多様な生活支援サービスの確保や権利擁護,⑤高齢期になっても住み続けることができる高齢者住まいの整備という5つの視点での取り組みを日常生活圏域で包括的,継続的に行うとされている2).
近年の研究により,2012年時点で,認知症高齢者数は462万人,軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)の数は約400万人と推定された3).また,MCIが認知症予備軍であると注目されていることから,MCI群への早期介入を行うことの重要性が指摘されている4).MCIの定義は,①認知症または正常のいずれでもないこと,②客観的な認知障害があり,同時に客観的な認知機能の経時的低下,または,主観的な低下の自己報告あるいは情報提供者による報告があること,③日常生活能力は維持されており,かつ,複雑な手段的機能は正常か,障害があっても最小であることとされている5).
今後も,認知症高齢者が増加することが予測されているが,MCIや初期の段階で,本人もしくは家族の判断で受診に至るケースは多くない.木村ら6)は,認知症高齢者の家族が高齢者をもの忘れ外来に受診させるまでのプロセスは,「疑いつつもやりすごす」,「受診を決意する」,「納得の診断を得るまで立ち向かう」段階があると指摘している.また,家族や本人にもの忘れの自覚があった場合においても,「年だから,忘れることは仕方がない」と医療機関を受診しないケースもある.しかしながら,老化に伴うもの忘れと認知症の症状である記憶障害の違いを家族や本人が判断することは困難である.オレンジプランにおいて,早期診断・早期対応が課題の一つとして挙げられており1),地域包括ケアシステムにおいても,予防の推進2)が記されているが,いかにして初期の段階でもの忘れ外来を受診してもらうかが重要である.高齢者に対して専門職が定期的にかかわる可能性として考えられるのが医療機関である.かかりつけの医療機関を定期的に受診している高齢者は多く,厚生労働省の2011年(平成23年)の患者調査において,65歳以上の外来の受診者数は,3,329.9千人と報告されている7).
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