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はじめに
パーキンソン病治療薬の歴史
パーキンソン病は,黒質のドパミン細胞の変性により脳内ドパミンの減少と相対的なアセチルコリンの増加により,無動や筋強剛,姿勢保持反射障害等の錐体外路症状を呈する疾患である.
1950年代後半にパーキンソン病患者の線条体でドパミンの減少が報告されたことにより,1960年代にL-dopaによる治療が開始され,その後L-dopaの脳内移行を高めるため末梢でのドパミン代謝を阻害するドパミン脱炭酸酵素阻害薬(DCI)との合剤が開発され,パーキンソン病治療の大きな転機となった.
しかし,L-dopaの効果は絶大であったものの,その先には治療合併症といわれる新たな問題が出現してきた.ウェアリングオフ現象,ジスキネジア,幻覚がその最たるものである.以来,パーキンソン病の治療は,L-dopaを中心としてこれらの治療合併症をいかに防ぎ,コントロールしていくかということに主題が置かれるようになった.L-dopaはDCIとの合剤であっても半減期が2~3時間ほどである.初期のパーキンソン病患者では,ある程度自分自身のドパミンが補助的に働き,たとえ薬が切れても症状が悪化することはないが,進行期になると薬が切れたとたんにパーキンソン症状が悪化する(図1,2).これがウェアリングオフ現象の基本であり,このことから,できるだけドパミン作用を長時間保つ薬が開発されてきた.半減期の長いドパミン受容体刺激薬(ドパミンアゴニスト)やドパミンの脳内での代謝経路を妨げ,ドパミン濃度を高めるMAO-B阻害薬(セレギリン),末梢での代謝経路を妨げるCOMT阻害薬(エンタカポン),チロシンからドパミンの生成を促進させるといわれているゾニサミド等が開発,使用されるようになってきた.さらに,ジスキネジアや幻覚の出現の要因の一つとしてドパミン刺激の変動が指摘され,近年はCDS(continuous dopaminergic stimulation)といわれるドパミン受容体の持続的な刺激が治療合併症の軽減につながると重要視されるようになってきた.
これらの経緯から新しい治療薬としてここ数年で使用されるようになってきたのが,ドパミンアゴニスト徐放剤(プラミペキソール徐放剤,ロピニロール徐放剤)とドパミンアゴニスト貼付剤(ロチゴチン)である.また2013年(平成25年)の5月には,これまでのパーキンソン病治療薬とは違い,ドパミン刺激を介さないアデノシン受容体拮抗薬が発売された.以下の項ではドパミンアゴニスト徐放剤・貼付剤とアデノシン受容体拮抗薬について説明する.
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