特集 現代医学・生物学の仮説・学説
7.疾病
神経難病
金澤 一郎
1
1東京大学医学部神経内科
pp.594-597
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900658
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概説
ちょうど20年前,厚生省は,「一般的に治療法が確立しておらず患者もそれほど多くないために学術研究も盛んでない疾患」に対して難病という言葉を用いた。そして,それを特定疾患(難病)として指定し,研究費を出して研究を促進するとともに,国と地方自治体が医療費の面倒をみるというシステムを作った。この中に,神経系の疾患がいくつか含まれていた。たとえばパーキンソン病,多発性硬化症,筋萎縮性側索硬化症などである。すなわち今でいう神経難病が数多く含まれていたが,当時はそのように神経系のものだけを特殊に分離してよぶことはしなかったように思う。現在でも厚生省では,経済的な患者救済が可能なものに限る考えであるため,治療困難で厄介な病であるが患者がきわめて多い病気である癌やアルツハイマー病は難病とはよんでいない。
厚生省に1~2年遅れて,文部省特定研究「難病の発症機構(冲中重雄班長)」が発足することになった。これが昭和49年のことで6年間続いた。その後しばらく間が開いて,昭和59年同じく文部省特定研究「神経難病の発症機構(豊倉康夫班長)」が発足することになる。このとき,この研究班のブレーンの人達が,「神経難病」というきわめて説得力のある言葉を発明したと理解している。そのときの神経難病の意味は厚生省の定義とは離れて,「学問的にわからないところのあるすべての神経疾患」を意味していたように思う。
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