特集 外科医のための緩和ケア
[エディトリアル]外科と緩和ケア
小山 靖夫
1
Yasuo KOYAMA
1
1栃木県立がんセンター外科
pp.1541-1543
発行日 1995年12月20日
Published Date 1995/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902152
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はじめに
「外科」は本来侵襲的な治療手段であるから,得られるメリットとのバランスにおいて功罪が評価される.疾患の治癒あるいは症状緩和や延命を目的として適応されるが,治療が行われる時点での患者の訴えは,早期がんのように症状のない場合から,痛みその他の強い症状をもつ場合まで様々である.一方,「緩和ケア」はもっぱら苦痛を取り除くことを目標としており,肉体的・精神的苦痛の訴えのある状態が対象であり,苦痛の緩和が得られなければ,その治療あるいはケアは評価されない.
ところで,治療と緩和ケアの関係を“がん”について考えてみると,疾患の初期には症状はなく,治療の侵襲性は少ない(縮小手術,機能温存手術)ばかりでなく,治癒率も高い.ところが,疾患が進行すると症状が出現し,治療の侵襲性は大きくなり(拡大手術),長期化し(集学的治療),しかも治癒率は低いという「苦痛は多いがメリットを得るチャンスの少ない」治療がなされることになる.この状況から,治療に関連するquality of life(QOL)の評価や緩和ケアの必要性が議論されるようになってきたわけである.しかし,それでは「緩和ケアの必要度は疾患の初期の段階では少なく,終末期に近づくにつれて大きくなる」というように理解してよいであろうか.
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