特集 透析診療のすべて
Part 3 透析診療におけるトラブルシューティングと合併症管理
19.透析患者と心脳血管疾患②不整脈—注意したい血清K濃度
牧原 優
1
Yu MAKIHARA
1
1東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科
pp.481-488
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103901156
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
透析患者には不整脈疾患の合併が多いことが知られている。植込み型ループ式心電計(ILR)を用いた研究のメタ解析1)では,その発症率は,徐脈性不整脈で0.19/人年〔95%信頼区間(CI)0.11〜0.33〕,新規心房細動で0.19/人年(95%CI 0.07〜0.49),心室性不整脈で0.02/人年(95%CI 0.01〜0.05)と報告されている。心筋症や弁膜症といった構造的心疾患,虚血性心疾患,電解質異常などの有病率が高いことが,透析患者に不整脈の合併が多い背景にあると考えられている。
さらに不整脈疾患は,透析患者の死亡の大きな要因となっており,米国では死因の判明した透析患者の44.9%,全透析患者の34.7%が不整脈あるいは心停止による死亡であった2)。日本では心不全・心筋梗塞による死亡が26.2%3)と報告されているが,不整脈・心停止といった項目での報告はないため,その割合は不明である。
特に徐脈性不整脈や心室性不整脈では,不安定な血行動態(ショック,意識障害など)となることもあるため,緊急での対応を要することがある。その場合,基本的にはBLS*1あるいはACLS*2ガイドライン4)に準じた対処を行うこととなるため,再確認をお勧めする。その際,透析によって改善し得る電解質異常(高カリウム血症など)がなければ,原則的には透析は中断することとなる。
本稿では,臨床で最もよく遭遇する不整脈である心房細動について話を進めていくこととするが,エビデンスの多くは主に非透析患者におけるものであることは注意が必要である。
Copyright © 2024, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.