特集 透析診療のすべて
Part 3 透析診療におけるトラブルシューティングと合併症管理
19.透析患者と心脳血管疾患①虚血性心疾患,低左心機能,弁膜症—透析患者で考えるべきポイント
野口 将彦
1
Masahiko NOGUCHI
1
1東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科
pp.473-480
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103901155
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透析患者の予後は悪い。日本透析医学会から報告されている2021年の慢性透析患者の動態1)によれば,50歳の透析患者の平均余命は,男性で17.4年,女性で19.8年,60歳の透析患者では,男性で12.3年,女性で14.3年であり,非透析患者と比較して約半分程度である。
透析患者はしばしば,虚血性心疾患,低左心機能,弁膜症,心房細動などの不整脈,脳血管疾患などの心脳血管疾患を合併する。日本透析医学会からの報告1)によれば,透析患者の主な死亡原因は,心不全,感染症,悪性腫瘍,脳血管障害,心筋梗塞であり,それぞれ全体の22.4%,22.0%,8.4%,5.6%,3.5%であった。心不全,心筋梗塞,脳血管障害を合わせた心血管死の割合は,31.5%であり,死亡原因の約1/3を占める。米国からの報告2)でも,心血管疾患は透析患者における全死亡の53%を占めるとされている。したがって,透析患者を診療するにあたっては,合併する心血管疾患に対する理解が必須である。
本稿では,透析患者と心血管疾患に注目し,虚血性心疾患,低左心機能・心不全,弁膜症について,それぞれの病態における患者のスクリーニングから,発症・指摘時の対応・考え方,発症後の管理に関して考えてみたい。
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