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Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder(CKD-MBD)とは,「骨や心血管の異常を呈すに至る慢性腎臓病に伴う全身性ミネラル代謝異常」と定義される病態生理学的概念である1)。
生体のCa(カルシウム)/P(リン)代謝は,複数の臓器が液性因子によってお互いに牽制しあう1つのネットワークによって営まれており,腎臓はそのなかでも主要な構成メンバーである。この腎臓が機能を失うと,液性因子による牽制が働かなくなり,Ca/P代謝ネットワークを構成する腎臓以外のメンバーが暴走を始めてしまい,その結果,身体には副甲状腺機能亢進症,代謝性骨疾患,軟組織石灰化などのさまざまな歪みが生じてくる。これらはかつてそれぞれに単独の病名が与えられていたが,すべて,腎臓を失ったことによる全身Ca/P代謝ネットワークの崩壊に基づく諸症状にすぎないと見なすことで,その総称として与えられたのがCKD-MBDという疾患概念である。
この説明から明らかなように,慢性腎臓病患者にみられる代謝性骨疾患がすべてCKD-MBDというわけではない。CKD-MBDとは,あくまでもその背景に「全身性ミネラル代謝異常」が関与している病態だけに適用される呼称である。逆に,CKD-MBDとは全身性ミネラル代謝異常に介入すれば緩解が望める病態である,と前向きに解釈することもできる。実際に,今日CKD-MBDの諸症状に対する治療アプローチは,Ca感知受容体作動薬,活性型ビタミンDアナログ,経口P吸着薬など,すべて全身のミネラル代謝に介入する薬剤である。
本稿ではこの3つの薬剤に絞って,全身のCa/P代謝への介入の観点から説明する*1。
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