特集 透析診療のすべて
Part 2 透析管理の基本と原則
6.透析患者における腎性貧血のマネジメント—病態の理解と治療法の実際
山内 真之
1
Masayuki YAMANOUCHI
1
1虎の門病院 腎センター 内科
pp.319-333
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103901134
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
多くの透析患者が貧血を合併していることが知られている。透析患者の貧血の主な原因は,エリスロポエチンerythropoietin(EPO)の相対的産生低下に起因する腎性貧血であるが,そのほか,鉄代謝障害などを原因とする貧血もしばしば合併する。臨床現場において,これらの病態の理解と治療方法の把握は,透析患者のQOLや生命予後を改善するために必須といえる。というのも,貧血や鉄代謝障害と心血管病・死亡イベントとの関連が明らかになっており,目標ヘモグロビン値(Hb値)に到達・維持することや良好な鉄動態を保つことが重要となっているからである。
1990年に赤血球造血刺激因子製剤(ESA*1)が発売され,腎性貧血治療はそれまでの輸血に依存していた時代から一変したが,一方でESA低反応や,ESAで打開できない鉄代謝障害などの課題も明らかになっている。2019年には低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素(HIF-PH*2)阻害薬が発売され,この薬剤が鉄代謝障害を改善するメカニズムを有していることから,ESAで解決できなかった種類の貧血を改善することに期待がもたれている。しかし,この薬剤も血栓塞栓症や悪性腫瘍のリスクを高める可能性が指摘されているため,慎重な投与が望まれる。
本稿では,透析患者にしばしば合併する腎性貧血と鉄代謝障害などの病態について確認したのち,透析患者のHb値や鉄の管理目標,そしてESAとHIF-PH阻害薬の有用性と問題点について述べたい。
Copyright © 2024, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.