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ホスピタリストにとっての呼吸器疾患は,遭遇頻度が非常に高いが,大半は慢性閉塞性肺疾患,気管支喘息,細菌性肺炎など,いわゆるコモンディジーズである。そこで,抗菌薬で改善しない肺浸潤影や,びまん性肺疾患を苦手としているホスピタリストも少なくないと思われる。筆者も呼吸器診療に携わる前は「原因不明の肺浸潤影=気管支鏡頼み」というイメージで,気管支鏡検査を行えばほとんどの診断がつくという程度しか理解していなかった。
急性呼吸不全の診療において,病歴,身体所見の重要性はいくら強調してもしすぎることはなく,患者が集中治療室にいてもそれは変わらない。ほとんどの症例で,病歴,身体所見,それに画像所見を追加することで鑑別診断は絞り込まれ,気管支鏡はその絞られた疾患に対して適応を検討すべきである。さまざまな呼吸器疾患,また全身性疾患の表現型としての呼吸不全を管理するホスピタリストには,気管支鏡検査で診断可能なもの,また診断には有用でないものを理解し,それぞれの検査精度,結果の意味するところを理解する能力が求められる。例えば,肺腫瘍であれば気管支鏡で見えたのか,組織はいくつ採取できたのかということで生検の感度が変化する,好酸球性肺炎であれば何%の気管支肺胞洗浄液(BALF)が回収できたかが重要になる,などの理解が,呼吸器内科医とディスカッションするうえで必要となってくる。
本稿では,気管支鏡検査のタイミングや,検査結果を理解するための知識,検査後の管理において考慮すべき合併症など,ホスピタリストとして知っておくべきことを中心にまとめる。はじめに気管支鏡検査における2つの大きな柱である気管支肺胞洗浄bronchoalveolar lavage(BAL)と経気管支肺生検transbronchial lung biopsy(TBLB)についてまとめ,次に気管支鏡検査を検討する代表疾患である感染症,びまん性肺疾患,肺腫瘍に関して考察する。最後に合併症とその対策について述べる。なお,本稿での気管支鏡はすべて軟性気管支鏡を指し,専門性の高い超音波気管支鏡や蛍光気管支鏡,また肺癌治療としてのレーザー焼灼や気道狭窄へのステント留置などについては扱わない。
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